#author("2025-05-01T16:37:57+09:00","","") #author("2025-05-01T16:38:10+09:00","","") *熱起電力測定 小型セル (EMF small_cell) [#eb822e59] #ref(emf1.jpg,right,around,50%) #ref(emf1.jpg,right,around,60%) |測定物性|メルトの起電力,Na2O活量| |測定条件|最高1600℃,雰囲気制御可能| |測定精度|±300mVのEMFに対して±5mV以内| |設計・製作|菅原 透,大平俊明| |履歴|2013年〜| |設置場所|総合環境理工学部5号館 224号室| #clear '' 測定原理'' 濃度の異なる二種類の電解質溶液のそれぞれに白金電極を入れて溶液を接触させるとイオンが拡散すると同時に電極間に電位差が生じ,濃淡電池が形成されます.高温で溶融状態にあるケイ酸塩メルトはアルカリイオンやアルカリ土類イオンが溶解した電解質溶液であり,濃淡電池をつくることができます.ケイ酸塩メルトで濃淡電池を構成するとNaイオンの拡散が支配的であるため,二種類のメルトの間のナトリウムの活量の比の対数は起電力に比例します(EF=RTln(aNa2O(melt1)/aNa2O(melt2),ネルンストの法則).従って,Na2O活量が既知のメルトを用いて他のメルトのNa2O活量を測定することができます.<br> Na2O活量はギブスエネルギーのNa2O物質量についてに微分であるため,活量の温度,組成依存性を調べることで,メルトの混合ギブスエネルギーの大きさについて考察することができます.またメルトにおける鉄や硫黄の酸化還元反応はNa2O活量依存性に大きく依存するため,メルトのレドックスの組成依存性の考察にも役立ちます. ---- #br #ref(emffig1.jpg,right,around,50%) #ref(emffig1.jpg,right,around,60%) 上記のような単純な濃淡電池でも上手く測定できることから,より一層の小型化と迅速計測ができるはずだと考えました.そこで2013年に超小型EMFセルの試作と試験を行いました.試行錯誤の結果得られたのが,左図の測定セルです.参照試料と測定試料のそれぞれを細い白金線で縛って酸素バーナーで溶融し,残った白金線の下部をアルミナ細管に巻きつけます.これを炉内に設置すると両端のガラスが溶けて接触します.二本の吊線の間に発生する起電力をマルチメーターで計測します. #clear #br #ref(emf2.jpg,right,around,30%) 左の写真は実際に測定に用いたEMFセルです. #clear #br #ref(emffig2.jpg,right,around,30%) 測定結果です.EMFセルを炉内に入れた瞬間に約80mVの安定した起電力が得られており,繰り返しの再現性も良いことがわかります.SiO2-Na2O系とSiO2-Al2O3-NaO2系メルトに対する測定結果は,我々の従来法による測定値とよく一致することが確認されました.従来法では約30gのガラス試料を用いて5時間以上の計測が必要でしたが,超小型セルでは200mg程度の試料で数分以内に計測が可能です.この測定法,もっといろいろと試して考察を広げたいのですが,他の研究テーマが忙しくマンパワーも足りないため,現在は中断しています. #clear #br