測定物性 | ガラスとガラス融液の熱拡散率 |
測定条件 | 室温〜1000℃(Tg以上の場合は試料が変形しない温度まで),真空下 |
測定精度 | 熱拡散率 ±5%以内 |
設計・製作 | 初代:菅原 透,木村太郎,二代目:菅原 透 |
履歴 | 初代:2008年〜2014年5月,二代目:2014年6月〜 |
設置場所 | 滋賀県立大学 工学部 |
測定原理
厚さ3-5mm程度の試料の片面に熱電対を取り付けて加熱炉に設置します.試料のもう一方の面に光照射によるエネルギーを加えて加熱すると,熱が試料の裏面にじわじわと伝わって熱電対の温度が上昇します.その温度上昇の時間変化を解析することで熱拡散率を求めます.この方法による熱拡散率測定法を「ステップ状加熱法」と呼びます.試料面での熱損失を最小化するために,測定は真空下で行います.ガラス試料の場合は光を透過させずにエネルギーとして吸収させる目的で照射面にカーボンスプレーを塗ります.
装置のブロック図
高温下の無機材料の熱拡散率の測定は現在では「レーザーフラッシュ法」が主流ですが,パルスレーザーや高精度で応答速度の速い赤外放射温度計などの部品が必要で,市販の装置はとても高価です.一方,ステップ状加熱法はレーザーフラッシュ法に比べると若干精度は劣りますが,比較的安価な部品の組み合わせで装置を製作することができます.
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装置図面
この装置は2014年に設計した二代目です.光照射ランプと試料位置をできるだけ近づける目的で,薄型の水冷真空フランジを新規設計しました.
加熱炉の炉心管に石英管を使用し,試料への光の照射具合が観察できるようにしました.
装置の背面.温度計,ピラニーゲージ,真空配管が並んでいます.
試料セットの様子.
計測プログラム
光を照射して二秒後くらいから試料裏面温度が増加している様子が記録されています.
データ解析プログラム
.本装置では小林・熊田(1967, 原子力学会誌, 9, 58-64)の方法により,試料表面と裏面の輻射熱損失の影響を考慮した解析法を採用しています.この解析法では試料の密度と比熱も用いて熱伝導率も同時に求まります.
初代装置の完成直後の様子(2008年)
初代は予算が無かったため,有り合わせの部品だけで組み立てました.加熱炉は最高500℃で制約があり,真空フランジの設計も悪く,真空度がなかなか上がりませんでした.そこで上記の二代目を設計することになりました
初代装置の解体直前の様子(2014年5月)