#author("2025-05-09T14:36:52+09:00","","") #author("2025-05-09T14:39:11+09:00","","") *高温双子型熱量計(High-temperature twin calorimeter) [#udd3746f] #ref(htc9.jpg,right,around,40%) |測定物性|室温から高温へのエンタルピー変化,ガラスの緩和エンタルピー| |測定温度|600℃| |設計・製作|菅原 透・アルバック理工| |履歴|2008〜2010年| |設置場所|滋賀県立大学工学部 (現在は行っていません)| #br '' 高温双子型熱量計の原理'' '' 測定原理'' 試料導入部とその外側の均熱ブロックがサーモパイル(熱電対を直列に繋いだもの)で接続されており,その起電力から試料の熱流束を計測します.DSC装置と同様に「試料セル」と「参照セル」があり,両者の起電力の差を取ることでベースライン安定性を高める構造になっています.このタイプの熱量計を ''Calvet型熱量計'' と呼ぶこともあります. 高温双子型熱量計では高温下で直接熱量を計測できるため,ホウ酸鉛のような融点の低い溶媒への酸化物の溶解熱を測定したり,低温の試料を高温にしたときの熱含量の変化を測定することができます. この熱量計はガラスの構造緩和エンタルピーを測定する目的で製作しました. アニール温度と時間の異なる(構造緩和状態の異なる)ガラス試料を準備し,それらを始状態の室温から終状態の600℃の熱量計に投入したときのエンタルピーを計測します.どのガラスも終状態の緩和条件は同一になるので,始状態のエンタルピーの違い,すなわち各ガラスの仮想温度の違いによるエンタルピーの差を計測することができます. #clear ---- #br #ref(htcfig1.jpg,right,around,40%) '' 高温熱量計の図面'' #clear #br #ref(htc15.jpg,right,around,30%) プラチネル熱電対(Pd·Pt14%·Au3%‐Au·Pd35%)をひとつずつ手作りしました. #clear #br #ref(htc16.jpg,right,around,20%) '' サーモパイルの完成'' 300対の熱電対が直列に接続されています.中央の熱交換部は銀製です. #clear #br #ref(htc2.jpg,right,around,35%) '' 双子型熱量計'' サーモパイルをSUS製のブロックに入れることで双子型熱量計を構成しました. #clear #br #ref(htc4.jpg,right,around,30%) ''加熱炉'' 双子型熱量計を加熱炉に設置します. #clear #br #ref(htc11.jpg,right,around,19%) 加熱炉は3層構造になっており,それぞれを独立に制御することで熱量計全体を均一の温度にすることができます. #clear #br #ref(htc5.jpg,right,around,30%) ''温度制御器'' ULVAC−RIKO TPC-5000 3台で加熱炉を制御しました. #clear #br #ref(htc6.jpg,right,around,30%) 実験中の様子 #clear #br #ref(htc7.jpg,right,around,30%) 試料を入れる白金ツルボ #clear #br #ref(htc8.jpg,right,around,30%) 試料の投入口 #clear #br #ref(htc17.jpg,right,around,40%) ''測定例'' この熱量計でソーダライムガラスの緩和エンタルピーの計測などを行いました. #clear #br #ref(htc18.jpg,right,around,40%) ''校正係数'' ところが使用するにつれて,(Al2O3のエンタルピー/吸熱面積)で定義される装置の校正係数が次第に大きくなり,計測が進むにつれて感度が悪くなってしまいました.高温で長時間保持するために,プラチネルのプラス側とマイナス側が元素拡散して起電力が低下したと考えられます. #clear #br #ref(htc12.jpg,right,around,30%) ベースラインが安定しなくなってきたので,検出器を取り出すことにしました. #clear #br #ref(htc13.jpg,right,around,30%) ステンレスが真っ黒になっています.メンテナンスと修理が大変な装置でした. #clear #br